世界遺産に登録されるメリットとデメリット
※世界遺産に登録されている岐阜県 白川郷を参考にしています。
・世界遺産に登録されるという誇り
-> 地元の人は地元の良さを知らない。四国でも四国遍路に熱心な人たちばかりではないが、世界遺産に登録されれば、四国遍路に興味を持っていなかった地元民の四国遍路に対する考えが変わることへの期待。
・登録させよう、継続して登録させようとする目標が四国遍路を保護、保存、継承させていくための動機付けとなる。
-> 現在は各団体がそれぞれ活動していてバラバラだが、一つの目標を持つことで一致団結することができる。
-> 現在、遍路道の整備を行っているのは、高齢者の有志がほとんどであり、体力的な問題で遍路道の整備ができなくなり、一部の遍路道が歩けなくなる可能性がある。現に、旧遍路道のいくつかは整備されないため、歩けなくなり、忘れ去られている状態である。しかし、世界遺産登録によって若い世代が四国遍路に興味や誇りを持ち、活動に参加してくれるようになれば、四国遍路を後世に残せる可能性が高まる。
・登録されると保有国と国際社会にはその世界遺産を保護する義務と責任が生じるため、国や世界からの擁護が得られる。
-> ただしユネスコからの補助金などはない。国からの補助金は規定されてはいないし、あてにできない。世界遺産を破壊した場合の罰則規定もない。
・観光客による経済効果
-> 四国遍路は仏教(教徒数は、キリスト教の5分の1)であり、ブッダではなく空海(仏教徒の多い中国、タイではそれほど有名ではない)の巡礼路のため、現状だとスペインの巡礼路ほど爆発的に多くの人が訪れる可能性は高くはないと推測される。現に「2015 年 世界で訪れるべき 52ヶ所」で四国遍路が紹介されたが、海外からの巡礼者の増加数は2倍に満たなかった。富士山も世界遺産に登録されたが、一時的に4割増しにはなるも、入山料徴収のためかもしれないが登山客数は変わっていない。そのため四国遍路も、多くの経済効果は期待できないかもしれない。
・道路が改善される
-> 昔ながらの遍路道を歩きやすいようにアスファルト化するなどの行為は、遺産の破壊行為とみなされる可能性はある。
・文化庁の介入により、世界遺産を継続させるために守るべきことが増える。
-> 自分の土地だが許可なくいじれなくなるなど、生活に一部制限が生じる場合がある。
・観光客による環境破壊(観光公害)が進む。
-> 四国遍路の場合は野宿者が増えるため、いたるところで住民とトラブルが発生することが予測される。
-> 普通の観光産業ならお土産やレストラン経営などで収入が得られるが、お接待ではお金が出て行くだけであり、人が多くなれば多くなるほど困ることになる。
-> 世界遺産に登録されていない現在においても善根宿などがどんどん潰れている状態であり、この状態で観光客が増えると体力のない善根宿がさらに潰れていく。新たに善根宿はできるだろうが、ノウハウを伝えていかなければ潰れる宿が増えるだけとなる。
・四国以外の業者が入ってくる
-> 有料駐車場などを無計画に作っていく。
-> 遍路に関係のないものが販売されるようになる。
-> 遍路宿経営者の高齢化により、観光客が増えても対応できない。新たな人たちが宿泊業に従事するようになるが、遍路を知らない。
・観光業に仕事を奪われ、本来の四国の風景が失われる
-> 畑仕事をしなくなり畑が潰れていく。もしくは業者に土地を売る。畑だった土地が観光のための施設などに変わっていくが、いつまでも続かないため廃業となりシャッター通りのような場所が増える懸念。業者は利益を優先するため、利益が出なければ即時撤退する。
-> 忙しくなった場合、人と接する時間が減る。親切さがなくなる。(お接待が薄れる)
-> コンビニエンスストアや自動販売機などが遍路道沿いに整備されたりすることで便利になる可能性があるが、便利になる分、お接待された時の感動が減っていく。
-> お接待は関西で西国三十三所観音霊場の修行者、巡礼者に対して始まったとされるが、 観光化、俗化したために関西では早くに廃れたといわれている(Wikipediaより)ため、四国遍路も観光化が進むと廃る危険性がある。
-> 訪れる人は「歴史や文化」に触れたいが、地元は「歴史や文化」を変えてしまい、観光に走りがち。
・世界遺産に登録される前に訪れた人間からすると、観光地化してしまい興ざめする。
-> リピーターを失う。
-> 観光化した高野山を避ける外国人もいるので、高野山の二の前にしてはならない。
・観光化による霊場の神秘性、弘法大師に対する畏敬の念が薄れるのではないかという不安。
・生活を守りたい住民と、さらなる経済効果を求める住民とに分かれ、対立しあうようになる。
-> 観光に従事していない人との温度差が出てくる。
・楽で収入がいい仕事に人が集まり、地域のバランスが崩れる。
-> 白川郷では駐車場経営が増え、有料駐車場がいたるところにできて問題となり、縮小された。
・お金が入ると「助け合い」が薄れて地域のつながりが減る。
「世界遺産」は、遺産を損傷、破壊等の脅威から保護するための条約であり、観光のためのに存在するのではありません。観光に走ると、逆に人が来なくなりますし、世界遺産も取り消されます。
また、保全が優先されるため、もし遍路道が登録された場合、昔ながらの遍路道が人が歩くことによって損傷が激しくなると判断されると、立ち入りが禁止されることもありえます。
四国遍路はいずれ世界遺産に登録されると思いますが、登録される前に上記のデメリットに対しての対策を講じておかなければなりません。
参考資料
・ユネスコ http://www.unesco.or.jp/faq/isan/
・文化庁 http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/sekai_isan/
・Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/世界遺産
・世界遺産 白川郷 観光の際のお願い
・世界遺産 白川郷を訪れる方へのお願い
・観光がもたらした「文化」の変容と保全(2011)
・世界遺産は楽じゃない 騒音やゴミで「観光公害」
・熊野古道の現状・世界遺産「ブランド化」の弊害(2016)
・四国遍路を世界遺産に。きっかけは2004年の一通の投書
・徳島県 / 四国遍路世界遺産登録のメリットについて
・四国霊場八十八ヶ所と遍路道の文化的景観をユネスコ世界遺産に
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